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一応、そういう史実だからである。
俊春についてゆくことにした。
そして、おれたちは五稜郭の榎本の部屋へ赴いた。
島田と相棒もいっしょである。
安富らもきたがった。しかし大勢で訪問しようものなら、とらえようによっては「新撰組謀反の図」みたいになるかもしれない。
だから、瘦小腿 島田と相棒とおれのだけついてゆくことになった。
俊春は、俊冬の頸をありったけの布で巻いた。それこそ、シャツや軍服の上着やズボンといったものまで使った。
それでも血で真っ赤になっている。
それを掌にぶら下げている姿は、コンビニで買い物した帰りみたいにみえてしまう。
俊春は、それほど飄々としている。
あきらかに無理をしている。それがわかるだけに、みていてつらくなる。
榎本がつかっている部屋のドアをノックすると、「どうぞ」と返答がかえってきた。
島田とおれが先に入室し、俊春と相棒がつづく。 榎本の執務室は、実にシンプルである。
榎本は、執務机の向こうに座っている。そして、大鳥が廊下側の長椅子に座っている。
どうやら二人は酒を、具体的にはワインを吞んでいるようである。
執務机上にワインの瓶が置いてあるのをみるまでもなく、執務室のドアを開けただけでアルコールのにおいが鼻をついた。
窓が開いているにもかかわらず、部屋の内にこれだけにおいがこもっているのだから、相当吞んでいるのであろう。
「おくつろぎのところ、申し訳ありません」
島田がきりだした。
ふだん温厚なかれにしては、ずいぶんと険のあるいい方であった。
「おおっと、新撰組の幹部が揃ってどうした?」
榎本が、ワイングラスがわりの湯呑みをかかげてきいてきた。
『新撰組の幹部が揃ってどうした?』
ということは、おれも幹部の一人として認識されているわけだ。
ちょっとだけテンションが上がった。
ってそんな場合ではない。
いまのその問いである。
どうしたもこうしたもないだろう?
かれの酔眼を睨みつけながら、ツッコまずにはいられない。
二人で呑んでいるのは、なにかの祝いなのか?
そう勘繰らざるを得ない。
たとえば、土方歳三が戦死したということを祝ってとか……?
榎本は執務机から、大鳥は長椅子でをこちらへめぐらせ、それぞれを向けてはいる。
しかし、とけっして合わせようとはしない。
は、あきらかにうしろめたさがあらわれている。
忘れられていてはいけないので、「昔取った杵柄」というのは、おれが現代にいたのスキルのことである。
念のため、補足説明しておきたい。
って心の中で説明している間に、すぐうしろにいるはずの俊春がいなくなっている。
「なっ、なにをしやがる?」
を執務机におさえつけていた。
めっちゃ暴挙である。
だが、島田も相棒もおれも傍観している。
そのとき、大鳥が立ち上がりかけた。
「大鳥陸軍奉行、座っていた方が身のためだと思いますがね」
島田がその大鳥の華奢な肩に掌を置き、忠告をしながら無理矢理座り直させた。
「陸軍奉行並が死んだ」
俊春がいった。その声音は、ぞっとするほど冷たい。
「戦死に見せかけ、背を撃たれた。敵にではない。味方に、だ」
さらに冷たい声が、音のない室内に響き渡る。
「敵と交渉し、貴様らのを助けてもらう手はずを整えてやった」
は、冷たい声でつづける。
かれはそう告げるなり、掌に持っている俊冬の頸を机の上におさえつけている榎本の鼻先に落とした。
榎本も大鳥も、それがなにかを即座に悟った。
驚愕以上の表情が、どちらのにも刻まれた。
「この頸のお蔭で、貴様らは生を繋ぐ。味方全員を救い、一生涯配慮せよ。そして、土方歳三のことで一生涯後悔しろ。もしも貴様らがそれを忘れるようなことにがあれば……」
かれは左掌の三本の指で榎本の頸をつかみ、力を加えた。
「この頸のようにしてやる。否、恐怖と屈辱にまみれた人生を味あわせてやる。忘れるな。「狂い犬」は、子犬の皮をかぶりし餓狼だ。貴様ら自身だけではない。貴様らの親類縁者、子々孫々まで呪い祟ってやる」
俊春の厨二病的な脅しに、大鳥の華奢な背中がめっちゃ震えだした。彼は、マジでビビりまくっているのである。
いまにも俊春に頸を握りつぶされようとしている榎本にいたっては、
榎本の悲鳴にも似た問いがきこえたときには、俊春が
昔取った杵柄ではないが、いまの二人の